人間の生き方を言葉で伝えようとしても、子どもにはなかなかうまく伝わりません。その一方で、伝えようとは思っていなくても、日頃の姿を通して大人の生きざまを子どもの心は敏感に感じ取っている。言葉ではなく、その人が実際に行っている行動こそが、その人の本質です。いくら言葉巧みにその本質を隠そうとしても、無意識に口にした言葉の端々、何気ない態度にその人の人間性が白日のもとに表れてしまう。自分の人間性や本当の姿は絶対に隠すこともごまかすこともできない、そのことを教師たるものは覚悟を決めなければならないと思います。
人間は言葉には「反発」しても、環境には「反応」します。適切な環境には適切に反応します。子どもにとって最大の教育環境とは何か。それは教師自身であると思います。毎日の学校生活において身近に接する教師の人間性こそが、子ども達にとっての最大の教育環境に他なりません。
完璧な人間などどこにもいません。誰もが自分の欠点に苦しみ呻吟(しんぎん)しながら生きています。教師もその例外ではありません。人にどう思われるかなどと余計なことにエネルギーを費やすのではなく、子ども達のために今の自分にでもできることは何か、そのことを考え、そのことに集中し、できる事から一歩でも前進する。教師の資質向上といっても、そうした地道な繰り返しの中にしか、人間としての成長はないのだと思います。